池田恵理子さん


世界にはトランプ外交の嵐が吹き荒れて、国内は米不足と米の価格高騰、夫婦別姓問題も紛糾・・・といった中で、「新しい戦前か」といわれるような危機感が忍び寄っています。憲法9条の平和主義はどうなるのでしょう。



 「慰安婦」問題の関連では、ちょうど1カ月前の421日、参議院決算委員会で共産党の紙智子議員が、日本政府は1993年の河野談話に反して、民間の研究者や市民が発見した「慰安婦」関連資料の受け取りを拒否してきたことを厳しく問い質しました。


河野談話では、「政府としては今後とも民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい」としていましたが、内閣官房は各省庁が提出してきた資料は受け取るが、それ以外は無視してきたのです。内閣官房は核心に迫ることは何も言わない、という相変わらずの返答でした。


この問題は、これからも追及していかなければならない・・・と強く思いました。

 


 423日には、沖縄で米兵による性暴力事件が2件、明らかになりました。

427日、28日には原宿と新宿で米軍兵士の性暴力を許さない女たちの街頭行動があり、29日にはwamで沖縄の女性史研究家の宮城晴美さんが「沖縄と天皇制」をテーマに、いかに戦後沖縄の女性たちが厳しい状況におかれてきたかを語りました。


今日は後ほど、「沖縄の闘いと連帯する東京東部集会実行委員会」の山本裕子さんに、沖縄における米兵の性暴力について語っていただきますので、ご期待ください。

 


 先月の水曜行動でも予告しましたが、沖縄に残留した朝鮮の「慰安婦」被害者、裴奉奇(ペ・ポンギ)さんの名乗り出を記念した「4.23アクション」が、419日にはフォーラムを、23日には街頭行動を行いました。私も参加したフォーラムには、若い人たちがたくさん集まってきたのが嬉しかったです。


裴奉奇さんの証言は映画や本で伝えられてきましたが、私は19916月の沖縄返還の日に、NHKの番組で裴さんを取り上げた映画を短く紹介しました。私にとってはこれが、今に至るまでの「慰安婦」問題に取り組むきっかけとなったので忘れることができません。


 韓国で申請された「慰安婦」被害者は240人ですが生存者は6人だけで、その平均年齢は95.6歳だということです。


今日は、この511日に98歳で亡くなられた李玉善(イ・オクソン)さんのことを、川崎に李さんを招いて証言集会を開いた玉盛清さんに話していただくので、是非お聴きください。

 

私にも、李玉善さんについてはいくつも思い出があります。

李さんは20年間、韓国の「ナヌムの家」で暮らしていたので、私たちが「ナヌムの家」を訪ねるとお目にかかれたし、ソウルの日本大使館前の水曜デモでもお話を聴くことができました。


はじめは取っつきにくい感じのハルモニでしたが、その芯の強さと言葉の強さには並々ならないものがありました。李さんのことは映画や本だけでなく、2017年に長編漫画『草』でも描かれたんですね。キム・ジェンドリ・グムスクさんが描かれた漫画で、これが韓国で出版されて話題になった時、李昤京(リ・リョンギョ)さんと都築寿美枝さんが翻訳をする日本語版を作れないか・・・という話が持ち上がりました。フランス語、英語、イタリア語、スペイン語などにも翻訳されると聞きました。


そこで都築さんと広島の岡原美知子さんと私の3人は日本語版の出版委員会を立ち上げて、クラウドファンディングで資金集めをしました。『草』はこのように500頁もある分厚い漫画なので、販売価格はかなり高価になってしまいます。ですから少しでも資金を集めて単価を安くして、多くの人に読んでもらおうと思ったのです。そのようにして、この日本語版ができました。


先週、李玉善さんの訃報を聞いて、もう一度この漫画を読んで李さんの一生を振り返ってみました。日本軍の慰安所であんなに残虐な被害を受けたのに、戦後はあれだけ強く頑張って生き抜いて、最後まで日本政府を訴え続け、若い人たちにバトンタッチして、日本人とも親しく交流して連帯してこられたというのは、ほんとうにすごい人だなぁ…と改めて実感しました。


李玉善さんは98歳まで、よくぞ長生きされました。そんな李さんが亡くなられたら、彼女に出会ったり話を聴いたり、あるいは漫画を読んだりした人たちが、彼女の果たせなかったことを何とか実現させよう、自分たちが引き継いでいくのだと動き出すこと。。。それを、李さんが一番喜んでくれるのではないでしょうか。


李玉善さんのような被害女性は各国にいらっしゃるんですね。自分の被害を訴えて日本政府の責任を問い続け、その願いが叶わないままに亡くなられた女性たち…。


私は仲間たちと中国山西省の被害者支援をしてきましたが、裁判で闘った被害女性たちは全員が亡くなってしまいました。私たちは彼女たちの思いを胸に、その思いを継いでいくことが何よりもの追悼であり感謝の気持ちを表すことではないかと思っています。

この問題に少しでも関心を持たれた方は、是非彼女たちの証言や本や漫画や映画などにも関心を向けてください。そして私たちにもお声をかけてください。ぜひご一緒に、この活動を担っていきましょう。